「朝の読書」1万校突破!
約400万人の児童・生徒が毎朝読書を楽しむ
- 朝の読書推進協議会(大塚笑子理事長)の調査で、『朝の読書』の実施校が9月5日現在で10,113校になったことが明らかになった。これまで「子どもの活字離れ、読書離れ」が指摘されてきていたが、全国小・中・高校の26%が『朝の読書』を導入し、約400万人の児童生徒が毎朝10分間の読書を実践している。同調査は、朝の読書推進協議会が全国の教師等の協力を得ながら、随時全国の小・中・高校(国立・公立・私立)の実態をアンケートで調査しているもので、学校から回答があったものだけがデータ化されている。
- 10,113校の内訳は、小学校6,770校(実施率29%)、中学校2,738校(同25%)、高校605校(同13%)。実施規模は、全校一斉8,277校(82%)、学年1.040校(10%)、学級719校(7%)、授業77校(1%)で、実施時間は10分間が5,108校(51%)、15分間3,446校(34%)、20分間1,111校(11%)、その他448校(4%)となっている。
- 『朝の読書』運動は、千葉県の高校で林公(はやし・ひろし)教諭と大塚笑子(おおつか・えみこ)教諭が、読書によって「生きる力」や「学ぶ力」を育むために1988年に勤務校で提唱・実践したことから始まる。『朝の読書』の原理は「みんなでやる」「毎日やる」「好きな本でよい」「ただ読むだけ」と、評価と競争を求めない自由さにあり、これが子どもたちに受け入れられたことが全国の学校に広がった大きな要因となっている。
- この広がりの背景を同協議会は「本来は子どもたち一人ひとりの生きる力と自ら学ぶ力をつけるための試みであったが、1997年前後あたりから、いじめ、不登校、学級崩壊から少年刑法犯の増加など、学校現場では危機的状況に迫られた世相が導入に拍車をかけたようだ。その後年々導入校が増え、今年1月に遠山敦子文部科学大臣の『学びのすすめ』アピールで朝の読書の導入を求める発言が、学校で導入しやすいきっかけにもなっている」と分析する。
- しかし、『朝の読書』の広がりとともに課題も生じてきている。特に問題とされるのは、学校で「本が不足している」「図書費が少ない」という声が急増してきたことだ。同協議会は、「読む環境は『朝の読書』で出来上がってきたが、学校に本がないという問題は深刻である。国では学校図書館を充実させるために今年度から5年間で650億円(年間130億円)の図書整備費を予算措置しているので、学校はもっと積極的に国の施策通り整備費を予算化するよう教育委員会や自治体に働きかけることが必要だ」としている。
- 昨年末に「子どもの読書活動推進法」が施行され、この法律を具体的に生かすための「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が8月2日に閣議決定された。子どもが読書をするか否かは国の将来に関わる問題として、学校や地域、自治体が子どもの読書環境の整備が推進されることになった。
- 「子どもの読書活動推進法」の制定に関わった子どもの未来を考える議員連盟事務局次長肥田美代子さん(衆議院議員)は、この『朝の読書』の広がりについて「『朝の読書』を導入した学校が1万校を超え、毎朝読書を楽しむ子どもの数は約400万人とお聞きし感動しています。ただ、学校図書館の本不足はほんとうに悲しいことだ。子どもの読書活動推進法の具体化を急ぐことで責任を果たしたい」。また、「本の学校大山緑陰シンポジウム」で朝の読書交流会の全国展開への出発点となった鳥取県米子市の本の学校の設立者であり、今井書店グループ社長の永井伸和さんは「鳥取県内88%の小中高校での『朝の読書』の実施率は日本一だろう。林先生との出会いによって先生たちが『朝の読書』に取り組み、県教育センターが支援した。1万校が2万校、いや3万校になって欲しい。これこそ現場からの教育改革だからだ」と、子どもの読書が教育や国づくりにいかに重要なものであるかを語っている。
- (平成14年9月9日)
【本件に関するお問い合わせ先】
朝の読書推進協議会 事務局 佐川、高橋 TEL 03-3266-9587