『朝の読書』2万校突破!
〜742万人の児童・生徒が取り組む〜
- 平成17年8月29日
- 朝の読書推進協議会(大塚笑子理事長、事務局:トーハン広報室)の調べで、8月29日現在、全国小・中・高校の『朝の読書』実践校が20,005校になりました。実践校の内訳は、小学校12,923校(実施率57%)、中学校5,747校(実施率52%)、高校1,335校(実施率26%)で、総合実施率は51%。取り組んでいる児童・生徒は実に742万人を超える一大読書運動に成長しました。
- 『朝の読書』運動は、授業前の10分間、児童・生徒と教師の全員が自分が読みたい本を自由に読む読書活動で、1988年に千葉県の女子高校で林公(はやし・ひろし)教諭と大塚笑子(おおつか・えみこ)教諭の提唱と実践で誕生しました。その後、1995年からトーハンが二人の教師の活動を応援することになり、全国の学校に推進するため1997年に朝の読書推進協議会を発足させました。同協議会は事務局を同社広報室に設置し、「全国縦断朝の読書交流会」の開催や新聞各社と連携して「朝の読書新聞広告特集」の企画、また講演会・校内研修会講師派遣、実施校調査など、運動全般にわたる活動が今日の普及拡大に大きな貢献を果たしています。
- 『朝の読書』実践校調査は、朝の読書推進協議会と全国各地の志ある朝の読書運動家らが実施状況を把握するために任意に行っているもので、それらの調査累計で2万校の実施が明らかになったものです。調査の主な項目は「実施年(新規実施年)」「実施規模」「実施回数」「実施時間」「読書対象」「感想文の状況」などで、「実施年(新規実施年)」は1998年から2003年の6年間に導入した学校が70%を占めます。「実施規模」は全校一斉が87.2%、学年実施8.0%、学級実施4.2%、授業の中で実施が0.5%。「実施回数」は毎日実施が30.3%、週4日6.2%、週3日7.6%、週2日12.3%、週1日22.2%、期間限定9.0%、不明12.4%。毎日と毎日に近い週4日を合わせても36%という状況は、さらに毎日実施の理解を促していく必要性もあるようです。また「実施時間」は5分間1.0%、10分間52.1%、15分間34.3%、20分間9.8%、その他3.8%と、意外に時間を大目に設定している学校も目立ちます。
- 『朝の読書』の原則である「感想文を書かせない」は、69.7%で、「書かせることもある」26.7%、「定期的に書かせる」2.7%など、何らかの形で感想文を書かせている実施校は29.4%にもなる。
- 実施校の約30%が「感想文を書かせている」ことについて、朝の読書推進協議会事務局は「『朝の読書』は感想文を求めない自由さが子どもたちにすんなりと受け入れられた最大の要因。学校の事情もあると思うが、評価や競争が介在してくると子どもたちには苦痛となり、継続にも問題が出てくる。みんなでやる、毎日やる、好きな本でよい、ただ読むだけの4原則に準じた実践への配慮が大事」とし、今日の運動の広がりの背景については、「1995年に運動をスタートさせた時点では10校程度の実践であったが、3年後に500校に達した頃から急激に導入校数が伸び始めた。年間平均3,000校程度の増え方になったが、この急増した要因は、90年代後半から学校ではいじめや不登校、少年犯罪の増加や学級崩壊などが深刻になった世相が影響した」と分析します。さらに「1万校への到達には8年を要したが、その後の累計2万校に3年で達する勢いをみても、『朝の読書』がいかに学校教育に浸透したかが推し量れる。高校では大学受験などの事情で実施率は依然低迷しているが、徐々に導入校は増えている。特に義務教育課程全学校への普及は早い時期に実現するのでは」と推測しています。
- 『朝の読書』の生みの親で、現在朝の読書推進協議会理事長の大塚笑子氏(高校教諭)は、「17年前に私たち二人の教師が試みた『朝の読書』が、今、これだけ多くの学校に受け入れられたことは奇跡にちかい。私たち教師には資金もなければ労力もない。あるのは一人でも多くの子どもたちのために、一人でも多くの先生方にその意義と教育的効果を伝え、『朝の読書』を実践してほしいという熱い思いだけ。請われれば仕事の合間をぬって全国へ駆けつけるという、自分にできることだけコツコツと積み上げてきた。トーハンの力添えがなかったら、この2万校という広がりも夢のまた夢であった。さらに日本中の子どもたちのために、全学校に『朝の読書』を実現すべく、全力を尽くす覚悟」と思いを語っています。
- 『朝の読書』が定着した学校では、「本を読まなかった子が読書好きになった」「読書をすることで子どもたちに落ち着きが出てきた」「読解力がついた」「語彙が豊かになった」「遅刻やいじめが少なくなった」「他人をおもいやる気持ちが出てきた」などの様々な効果がある一方、「学校図書館には読む本が少なく、ある本は古いものばかりで子どもたちのニーズに対応できない」「本が少ないから継続するのが困難」という環境面の問題や、「『朝の読書』は子どもたちだけの実践で、教師はその時間に会議をしている」学校が25%超あります。これらに対し「学校図書館の蔵書不足はかなり深刻な問題。その不足分を補填する学校図書館図書整備5カ年計画も、予算化する自治体は毎年25%程度と、学校の図書環境は一向に改善されていない。もう一つの問題は、先生方も教室で一緒に読むことが鉄則で、そうしないと継続と成果に結びつかず、むしろ形骸化する可能性が高い」と、今後の運動方針の課題を示しています。
- なお、朝の読書推進協議会では、これまでの運動の歴史をまとめた『朝の読書の夢〜朝の読書運動17年の軌跡(仮題)』(予価800円)を11月にメディアパルから出版します。内容は、文化庁長官・臨床心理学者河合隼雄氏の「朝の読書のすすめ」を始め、朝の読書の歩み、子どもの体験談、家庭での話題や、同協議会が各新聞社と連携して実施してきた新聞広告特集などが収録されます。『朝の読書』の運動をまとめた初めての本となります。
【本件に関するお問い合わせ先】
朝の読書推進協議会 事務局 佐川、高橋 TEL 03-3266-9587