「はつかり」は漢字で初雁と書く。国語辞典で引くと「その年の秋はじめて北方から飛んでくるカリ」とある。カリは漢字で雁と書き「ガン」の別名で日本へは秋に来て春に北へ帰る渡り鳥である。いわば北国からの使者で「北国への特急」にふさわしいといえよう。
1958(昭和33)年4月、同年秋運転開始予定の東京-大阪間日帰りビジネス特急の愛称公募が行われ、従来の愛称とはまったく違った愛称として「こだま」が当選したが、「さくら」「はやぶさ」「初雁(はつかり)」「平和」が選外佳作として選ばれ、ここでも「雁」は顔をだしている。特急の愛称になる機会をうかがっていたかのようであり、「こだま」とほぼ同時に登場した東北初の特急の名になったのは当然の流れだっただろう。それからは上野-青森間の北海道連絡特急として、東北新幹線開通後は新幹線接続特急として青函トンネルを抜けて函館まで運転され北国への使者としての使命を果たした。
「みちのく」は1950年11月、それまで列車番号だけだった急行列車に愛称を付けることになり国鉄本社によって命名された愛称のひとつで「列車愛称第一期生」である。「みちのく」は「道の奥」と書き、「陸前」「陸中」「陸奥」三国の総称で東北地方の別名でもあるが、特急のなかった東北地方にとって上野と東北北部を昼行で結ぶ東北の代表列車の名にふさわしいといえよう。「はつかり」登場後はその補助列車的な性格が強くなったが、上野-青森間を常磐線経由で結ぶ昼行客車急行として沿線の都市間連絡、東北各地から北海道への連絡列車として多様な使命があった。
1972年から常磐線経由の昼行客車急行が電車特急に格上げされ「みちのく」を名乗ったが、6往復にまで成長した「はつかり」と比べ「みちのく」は最後まで1往復だった。東北新幹線の愛称名公募でも「みちのく」は最多得票にもかかわらず採用されず、東北の代表列車も晩年は不遇だったことは否めない。本書は「はつかり」「みちのく」の変遷をその前身の上野-青森間優等列車とともに取り上げた。客車、ディーゼル、電車とその変遷を写真で楽しんでいただきたい。
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