『昭和SLグラフィティ〔北海道編(下巻)〕』(令和4年7月刊)に、その雄姿を収めた蒸気機関車(Steam Locomotive=SL)は、昭和時代の北海道を駆け巡り、力強く、北の大地の開拓、産業、生活、そしてスキーなどのレジャーや観光の発展に貢献した。なつかしいその姿を切り取った写真で構成された写真集を眺めていると、本州や九州など、国内の他の地域でのSLの活躍もふつふつと蘇ってきた。
一世紀前の大正時代に開発された9600形、8620形以来、我が国のSLはすべて国産で誕生し、北は北海道・稚内から南は九州・鹿児島の指宿枕崎線まで、全国津々浦々で活躍した。そのほとんどは昭和20年の終戦以前に誕生し、戦火を潜り抜けたものだったが、昭和51年に北海道・追分駅の9600形の構内作業が終わり、最後のSLが退場するまで、この国の経済発展を牽引し続けてきた。
明治5(1872)年、新橋(汐留)~横浜で「陸蒸気」として産声を上げた我が国の鉄道は様々な成長を遂げ、令和4年9月には西九州新幹線武雄温泉~長崎が開通した。令和12年度末には北海道新幹線が北の都・札幌に到達する予定だ。東京(品川)~名古屋~大阪を今の東海道新幹線の半分以下の時間で結ぶリニア中央新幹線も建設が進んでいる。
しかし、その一方で、令和2年初めにこの国に上陸した新型コロナウイルス感染症の拡大は、公共交通機関の雄である鉄道を直撃した。都道府県境を跨いだ住民の移動が制限され、通勤・通学や出張はその多くがインターネットにとってかわられ、在宅勤務やオンライン授業が当たり前の世の中が出現した。その結果、これまで社会基盤を支える基幹産業として盤石だった多くの鉄道会社の経営は急激に危機に瀕した。既に自動車など他の交通機関にとってかわられつつあった地方交通線の赤字を幹線が支えきれない状況も生まれた。
「鉄路が消える」。私たちは、昭和40年代後半を中心に撮りためていた東北~九州の鉄道、特にSLの姿を記録にとどめる必要性を強く感じ、戦後我が国の復興を担った鉄道の風景を残すべく、この写真集の編集にあたった。
今から約半世紀前の希望にあふれていた時代。北は青森、南は鹿児島まで電化区間が伸び、SLから電気機関車や気動車、電車にバトンが引き継がれる最終コーナーの様子を感じ取って頂ければ、副題としてうたっている『未来へつなぐ日本の記憶』が残せるのではないかと考えている。
【目次】
第1章 東北・・・5 第2章 関東・中部・・・39 第3章 近畿・中国・・・91 第4章 九州・・・123
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